怖いひと
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山本周五郎を読むには、気合いが要る。
背景やストーリーはとてもリアルで、
フィクションにつきもののいい加減さというか気楽さがないように思う。
登場人物の理想は高く、僕のようないい加減な人間にはついて行けない。
作者の人物と妥協のなさが窺えて、なんだか苦しくなる。
やさしさも大きすぎ、小者の身が恥ずかしくなる。
しかし、いやしかも面白い。
読み飛ばしができなくて困る。
簡単に読むわけにはいかない。
- 作者: 山本周五郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/08/12
- メディア: 文庫
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昭和初期の浦安での作者の実体験を小説風につづった作品。
時代劇でないところも、僕には入りやすい。
当時の庶民を、インテリで本物のヒューマニストの作家のフィルタを通すと、
動物園のようでも散文詩のようでもあるこの作品になるのだ。
流行の「昭和」を感じることのできる作品として読むこともできる。
実在する登場人物の子供が、30年後に再会してみると、
当時の作者に関する記憶がまるで欠落している。
奇妙でもあり、作品世界の本質に関わるところのような不思議な感じ。
なお、この子供が生まれて初めて映画を見たときのエピソードは必読。
生まれた頃から家にテレビのある子供には考えられない反応。
ちょっと目から鱗。
最近読んだ別の本で、ヒットドラマ「冬のソナタ」が
ファンの心に訴えた昭和感について言及したものがあった。
その中に、案に相違して近代化してしまっている撮影の現地に失望したシルバー層は、
国交が正常化すれば、北朝鮮に押し寄せるであろうとの予測があった。
ノスタルジー美しく、おそるべし。