バックステージ オブ サイクリング・ブック

サイト「サイクリング・ブック」を作っていく上での諸事雑感などを書いていきます

クラバート、とくら

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サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

親が子供に与える本の影響は大きい。
とはいえ、これを読めと言って渡された記憶はない。
家にある本、あるいは親が読んだ本を、
鶏のようについばんで育ったというのが実情だ。

ある日、本を買ってきてあげたよ、と言って手渡された本がある。
選定図書であるとか学校の作文に必要であるとか、
何かの必然性が全くない時期であったため、
意味がわからず、そのために記憶に残っている。
子供向けなのだろうが、自分の「子供ンときの本」に分類されなかった不思議な本。
長じてもさして読むわけでもないのに手放さなかったため、
数重ねた引っ越しを経て、ハードカバーで唯一、小学校時代からの生き残りである。


クラバート

クラバート


作者は、ドイツの有名な児童文学者。
「大どろぼうホッチェンプロッツ」シリーズなどで有名。
(これはおそらく妹が持ち去ってしまった)
このシリーズも実家ではヒット作となった。


魔法もの、と言ってはそれはそうなのだが、
民間伝承をもとにしているせいか、不思議なリアリズムに富み、
魔法と迷信の境をうまく突いた気味があり、
それが「子供向け」と僕が分類しなかった理由になっている。
ドイツの群雄割拠時代の、粉屋の職人たちを題材にとり、
少年クラバートの成長を描く。
職人たちがとても魅力的だ。
装丁・挿絵もドイツ人(たぶん)で、モノクロ版画がミステリアスな想像を喚起する。
ジュンク堂を徘徊しているときに文庫版を見かけ、
イラストに惹かれて買いそうになった。
余裕があったら、そのうち買う。


魔法ものは、現実世界との距離の取り方がキーになると思う。
ハリー・ポッターのように、魔法を中心に小説世界を構築しているのではない。
おそらく作者は、やがて迷信に消えていくことを想像させる存在に、魔法を位置づけている。
クラバートは悪の象徴たる親方との対決後(こう書くととても陳腐になってしまう)、
仲間、恋人ともに粉屋を後にし、おそらく親方はその後に死ななければならないだろう、
という結末になっている。
民間伝承には、その後のクラバートというのもあるらしいが、
おそらく魔法そのものを描こうとしたのではない作者は、それを作品にしていない。
「大どろぼうホッチェンプロッツ」にも魔法は、脇役として使われている。
「魔法」の扱い方として参考になる一作。