ドットブロット

本来、読書ブログ。本をフィルター替わりに、日々のよしなしごとを考えます。

兄弟

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サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

兄、姉、弟、妹。
この中で、自分の家族として
どれが一番欲しくないかというアンケートでも取ったら、
おそらく弟である。
ところで僕は、その弟である。(妹もいるけど)
兄には、ときどき兄らしいことをせねば、
という義務感に不意に囚われる時期が到来するらしく、
そうなると唐突な親切を弟に行った。
その時期に買ってきてくれた本が2、3冊ある。


馬の首風雲録 (文春文庫 181-2)

馬の首風雲録 (文春文庫 181-2)


今思うと、友人間で話題にでもなったのであろう。
今はどうか知らないが、筒井康隆は学生に人気が高かったそうなので。
大学時代にそう聞いたときには、
だったら俺は筒井康隆を一冊も読んでやるものかと
ヒネクレ者の僕は考えたものだ。
決然(?)と「断読」に入る前と、つい最近読むきっかけを得た以後。
筒井康隆ものはそれに限られる。
長編ではこの一冊のみ。


中味の濃いSF作品。
星間戦争を題材に、犬型人4兄弟と母親の生き様を描く。
異人種を主人公にするのは、僕はあまり好きではなく、
イラストも特徴的であったので、普通だったら出会わなかった本である。 SFもそれほど好きなわけでもなかったし、
作者には、奇抜なアイデアが先行するイメージを抱いていた。
実際には、しっかりしたストーリー構成により、一途に読み進めることができた。
イデア部分もその中に自然に組み込まれ、納得がいった。
強烈ではないが、渋い味わいで、登場人物は何年も心に残る。


兄のお節介いや親切や恐るべし。
読者は、兄弟の誰かに自分を投影して読むことだろう。
トーマス・マンの「ブッデンブローク家の人びと」みたいなものか。
だいたい次男あたりはおバカ系になっていて、
自分もそこに感情移入することになっている。
しっかりものの長兄か次兄(次男ではなく)は、
実際の僕の兄に近く、
いろいろな責任を負い、それに男らしく黙って立ち向かう。
あまり深刻にならないでガンバッテね、と、
不肖の弟は思うものである。