ドットブロット

本来、読書ブログ。本をフィルター替わりに、日々のよしなしごとを考えます。

インターネット的な、あまりにもインターネット的な

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サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

「この本をこの課のバイブルにしよう」
会社のオフィシャルサイトのリーダーを仰せつかった彼は言った。
僕は謹んでその本を拝借、拝読した。
そして言った。
「けっ」
それは「ほぼ日刊イトイ新聞の本」であった。


ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)


細部は覚えていないが、
それは天下の糸井重里氏ならではのきらびやかな人脈を駆使した、
彼しかできないインターネットの試み、
そして成功の自慢としか読み取れなかった。


糸井重里氏の才能については、いまさら書くまでもない。
しかし彼の才能と業績をバックにした、例のないインターネットの試みと、
会社のオフィシャルサイトの目標に掲げる「リーダー」の存在は、
くすぶっていた僕の反感を煽り、顕在化させる以外のものではなかった。


きらびやかな才能というのは糸井氏のようなことを言うのだろう。
本来であれば、地味一辺倒になるかもしれなかったコピーライターという職業を
現在のようなステイタスのある仕事に押し上げたのは、
彼の力によるところが大きい。
業界事情にうとい僕は、そう認識している。
それはごく普通の人から遠くない認識だと思っている。


そのきらびやかさは、地味な側の人たちの反感を引き出す。
彼の天才をいくらわかっていたとしてもそれは変わらない。
しかし天才だ。おそるべし。

インターネット的 (PHP新書)

インターネット的 (PHP新書)


「インターネット的」
この本を読んで、素直にそう思う。
2001年、初版刊行。
2001年に、インターネットの本質をこれだけ洞察しえた人が、他にどれくらいいたのか。
僕にはわからないが、
たとえば哲学を学ぼうとする人が、カントやニーチェを読まざるを得ないくらい、
インターネットが普遍化したこの世界を理解するために必要な書と言える。

ほぼ日刊イトイ新聞の本」を、僕は年下の「リーダー」に返さなかった。
自分が抱いた反感ゆえ、彼に返却する際のコメントに困ったというのが正直なところ。
そのままになっている。
最近、本棚の整理を終えたが、その本は見あたらなかった。