ドットブロット

本来、読書ブログ。本をフィルター替わりに、日々のよしなしごとを考えます。

電子書籍をお供にサイクリングしようとしたら

こちらは旧サイトです。
本体ブログを更新しています。
サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

書籍または電子書籍をめぐる状況として、
さんざん言い尽くされたことのおさらいとなりますが、
電子書籍が紙の売り上げを阻害するのではないか、
あるいは電子書籍が紙を駆逐するのではないか、
というのが数年前まで出版界の議論でありました。

ここ数年、書籍と電子書籍は補完的であり、
市場としても共存する、
という統計と観測に落ち着いているように見えます。
ここまでが現況です。

ここからは私見です。
自分は共存するとは思っていません。
共存する期間はあると思いますが、
それは最終的な形ではないだろうと考えています。

電子書籍あるいは電子コミックは、
紙の書籍とコミックを駆逐するでしょう。
よく比較される音楽業界において、
DLやストリーミングがCDを駆逐したように、です。
理由としては、DBとモバイル性です。
可処分時間の少ない「忙しい現代人」としては、
身につけたスマホでいつでもどんな短時間でも読める電子書籍
有用性において圧倒的だからです。


現在共存が成り立っている理由として、
デバイス及びソフトウェアの未熟がある、と思っています。
そしてこの未熟は、長く続くのではないか、と予測しています。

そのため、駆逐までの過程が長くなり、
共存しているように見える期間が続くでしょう。
緩慢な死、とも言えます。

それは何故か?
音楽におけるCDのように
電子書籍が紙書籍に取って代わるには、
越すべきハードルがまだかなり高いからです。

iTunesの本質はiPodそのものではなくDBでした。
そのDB項目はこの程度です。

・名前(曲タイトル)
・時間(再生時間)
・アーティスト(名)
・アルバム(名)
・ジャンル
・レート(星幾つ)
・再生回数
・最後に再生した日
・作曲者

一方、自分が電子書籍を買い溜め、
不足だと思ったDB項目としては、
タイトル・著者名など必須の基本項目以外として

・購入日、
・大ジャンル、
・小ジャンル、
・マンガか書籍か雑誌か、
・読書中か読了かのフラグ、
・読了日、
・ほか自分目線で設定できる分類項目を2つ3つ
 (お気に入りレートや仕事の参考用か趣味か等の用途分け等)
最低これらの項目を自由に並べ替えられるくらいでないと、
リアルの本棚に肩を並べているとは言えません。
要は、
電子書籍の管理DB項目はiTunesのDB項目よりも多く、
個人の使い勝手に合わせられる設定が必要、
と考えています。
Amazon kindleにおいては、タイトル・著者・新しい商品、の3項目です。
 とほほ・・・)


ついで、
いわゆる可読性です。

これは主にフォントやレイアウト表現などソフトウェアの問題と思われています。

ところが、そうではない、という
良い反面教師サンプルを見つけてしまいました。
以下、iPhoneに購入した電子書籍の画面キャプチャです。

f:id:heineko:20160215233742j:plain
地図をタップして拡大すると・・・ ↓

f:id:heineko:20160215233756j:plain
・・・読めない。

f:id:heineko:20160215234054j:plain
リンクじゃないけど、なんで色付き?

f:id:heineko:20160215234215j:plain

色の強調の強度と意味がわかりません。

なんのための本なのでしょう。
歴史の研究書でもなし(新書です)、
紀行文としても文学性はないし、
歩いて辿るために読まれ使われるための本だと思われるのですが。
そこに地名さえ読み取れるか読み取れないかスレスレの解像度の地図。

いったい何のためか。
持ち運びできるだけ。
あるいは読めるだけ。
その先がありません。
どう読んでもらうつもりの、何のための本なのか。
この考えが欠落しているか、
考えても表現する手法が確立されていないか、
あるいは編集と制作をつなぐ指示系統が無いか
それとも機能していないか。
そうして作られた電子書籍が平気で売られているのです。

電子書籍が紙の書籍より圧倒的に使い易くなるのは
容易ではないのです。

結果として共存は長く続きます。おそらく。
そしてそれは紙書籍の市場にとっても、電子書籍市場にとっても、
右肩上がりではないあまり幸せでない状況だと想像します。

そしてこういう本を買って、
スマホで見ながらサイクリングをしようと考えた人間は、
ことさら幸せではありません。
自分です。
以上、恨み節でした。
長々と失礼しました。