バックステージ オブ サイクリング・ブック

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ハイソって今使うのか

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サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

トンガッテるよね、と言われたことがある。
不良でもなく、特に目立とうとしたわけでもなく、
更に言えば20代をいくつか過ぎていたので、
その評価には、首を傾げたものである。
もっともその頃は、トンガッテるという言葉自体を知らなかったので、
感想はしばらく後のことである。


それはアルバイトの同僚が言った言葉だったのだが、
アルバイト先というのは、都市計画コンサル業の事務所であった。
なんだかハイソ&アカデミックな雰囲気の漂う事務所で、
ひたすらビンボーな僕は密かな反感を育てていたのだ。
それを見透かされたかと、後からギクリとしたものだ。


ある時、共用のテーブルに置かれた書類の山の中に、
取締役のプライベートな書き物が目に入った。
新年にあたっての家族の抱負の寄せ書きであった。
学生の長男、高校生の長女のそれについての覚えはない。
たぶん、いかにも学生らしいものだったのだろう。
そして取締役の奥さんの一筆。
「○○様(取締役のファーストネーム)の健康に気をつけること。云々」
儀式やきまりごと、二十数度も繰り返した正月にも飽き飽きしていた僕の、
どこへぶつけていいかわからない反感は、
その時、どう始末したのだったろうか。


親和力 (講談社文芸文庫)

親和力 (講談社文芸文庫)


そんなバイト先および取締役をとりまく世界観に
非常に近いような印象がある作品。
やたら教育臭の漂う前半部分を乗り切れば、
それなりに面白く読める大ゲーテの一作である。
「若きウェルテルの悩み」よりは、ストーリーとして面白かった。
4人の主要登場人物の一人、
学校では頭が悪いという評価を受けていたオティーリエという女性の、
頭脳の働き方についての分析を妙に覚えている。
彼女にちょっと自分を見ていたのだろう。
良くも悪くも古典であるので、
ガンバッテ読むくらいの気合いは必要かもしれない。


改めて言うと、
件のアルバイト先の取締役をはじめ、上司、同僚たちは、
とてもいい人たちだった。
僕がいい年をして、ひねくれ者なだけだったのだ。
当時、「ソフィーの世界」という哲学の本が流行っていて、
トイレで一緒になった取締役は、僕にそれを勧めてくれた。
誰があんなもの読むけぇ、という作品の筆頭だったのだが、
そんな毒づきをしていたこと、とてもとても申し訳ない。
とにかく未熟だったのだ。
今もそんなに変わっていないのは、実に大きな問題だ。