ドットブロット

本来、読書ブログ。本をフィルター替わりに、日々のよしなしごとを考えます。

むずかしいカルヴィーノ

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サイクリング・ブック ー discover Japan by bicycling ー

タイトルだけで読みたくなる本というのがある。
僕にとって、イタロ・カルヴィーノの作品タイトルがそれだ。
「冬の夜ひとりの旅人が 」は、タイトルだけで本屋に探しに出かけた。
(正確には、アマゾンで調べてから)
他にも、
「まっぷたつの子爵 」
「木のぼり男爵 」
「不在の騎士」


最初に手に入れたのは、
「柔らかい月」である。

柔かい月 (河出文庫)

柔かい月 (河出文庫)

面白いことは面白い。
しかし困ったことに、難しくて、僕風情にはよくわからないのである。
(わからなくても面白いものはあるよ、と自己弁護)
前掲のタイトルも手に入れたのだが、
最初のわからなさと、どのタイトルを次に読むか、で
本棚の背表紙をチラ見する日が続いた。


短編集「むずかしい愛」の表紙には、
カルヴィーノの作風の転回点にあたり…」の記載がある。
それでこれを買って読むことにした。
そして、これは読めた。

むずかしい愛 (岩波文庫)

むずかしい愛 (岩波文庫)

普通の生活の中で、ある一点が気にかかってクローズアップせざるを得ないことがある。
しかしその些末事は、登場人物のアイデンティティそのものであって、
日常生活がそのクローズアップとともに進行する。
それが他人の目からは、他人の何でもない行動に映るか、可笑しいものに見えるのか。
そんな全体の調子が、自分にはとても納得がいく作品。
後の作品の難解さは、その萌芽としてこの作品中に散見されるが、許容範囲。


これで次のカルヴィーノ作品に進むことができる。
タイトルだけで、自分に合う何かしらが感知できる、という好例。