茶の間の正義
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僕の読書には、大きな、しかもいくつもの欠点がある。
そのひとつに、ハードカバーが苦手ということがある。
実家の本棚にぎっちりと詰まった古い文学全集が、
近づきがたいの威圧感となって子供心に刷り込まれたものと見える。
図書館や本屋をうろつくのが大好きだけれど、
成長してから、ハードカバーを積極的に買ったことがない。
古本新刊を問わず、文庫本ばかりをずっと集めてきた。
中古CD売り場で福山雅治を見かけないことがないように、
古本棚の常連というべきタイトルがある。
どこの古本屋でも見かけるので、一度見極めを失敗すると、
背表紙を見るだけで、長年手に取らぬことになる。
自分にとって、この本がそれにあたった。
山本夏彦「茶の間の正義」
- 作者: 山本夏彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/08/25
- メディア: 文庫
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立ち読みし、なんと屁理屈をこねるジジイかと思ったのが、
今思うと大学生入学間もない頃である。
再び手に取り、なんと面白いジジイであるかと思えたのは、
20代の終わりごろだったろうか。
名文というのはこうであるかと腑に落ち、
しかも文章には格というものがあると考えた時には、30を過ぎておった。
自分が読むべき成長の度合いというものがあるのだろうから、
気づくのが遅かったことは仕方がない。
例えば小泉や安倍内閣発足時の世間の興奮状態から、
我に返りたいような瞬間。
オヤジギャグの花咲くオフィスを忘れたい電車の中で、
高級な笑いを求める心。
そんな時にはこの一冊。